#4
──気まずい沈黙が降りてきた。 うわさでは聞いていたが、本人の口からはっきり聞かされると 葉山の頭の中は真っ白になってしまった。
(えーっと。何、何だっけ?こいつが体・・・売ってるって?? あ〜その、なんだ。ほら。何か言わないと・・・気まずい・・・・・ つーか空気が重い・・・・・。 でも、いったいなにを言えばいいんだ・・・あっ!そうだ!)
「て、TVでもつけるか。深夜だからたいした番組ないけど。 なんならDVDでも見るか?こないだ面白い映画、買って・・・」
この場の沈黙を何とか切り抜けようと、 その場しのぎの言葉を口にして、葉山は立ち上がろうとした。
「うわっ!」
ぐらっと足元が揺れた。 自分で思っていたより、酒が回っていたらしい。 慌てて遠野が支えると、そのままゆっくり、床に座らせた。 思いっきりバツの悪そうな葉山の顔を下から覗き込みながら、 ニッコリ微笑む。
「やっぱり。相変わらず酒、弱いんだな。あんた」 「違う。足がもつれたんだ!」 「あははは!はいはい。じゃ、そういうことで。 ・・・・・そんなことより・・・」
葉山を覗き込む遠野の目が妖しく光った。
「TVなんていいからさ。俺と・・・遊ぼう。葉山」
やんわりと両腕を掴まれて、葉山はギョッとした。
「遊ぼうって・・・な、ななななに!?お、おまえ・・・まさか・・・!!うっ」
驚いて大声を張り上げかけた葉山の口は、 一瞬で遠野の唇にふさがれた。 びっくりするくらいの柔らかさと、うっとりするような甘さが、 脳髄の奥の方まで伝わってくる。
(こ・・・こいつ、なんてキスの仕方、しやがるんだ!)
理性が飛びそうになる危険を感じて 葉山はなんとか遠野を引き離そうとした。 が、遠野はかえって首筋に腕を回すと、さらに唇を強く押し付けてきた。 柔らかな舌が葉山を求めてくる。
(な・・・な・・・に・・・・・)
頭の芯がジーンと痺れてきて、 葉山の両手が無意識のうちに、遠野の背中に伸びていく。 いつの間にか葉山は、遠野をしっかり抱きしめようとしていた。
|